「転倒後が怖い…」その不安が歩けなくなる原因に?|転倒後症候群とリハビリのポイント2025.10.24(金)
- リハビリの基本
こんにちは、埼玉脳梗塞リハビリベース うちリハ 理学療法士 重松です!
「また転んだらどうしよう」
転倒を経験すると、多くの方が強い恐怖を感じます。特に高齢者では、転倒による骨折や入院をきっかけに、自信を失い、外出や運動を控えるようになるケースが少なくありません。
このような心理的・身体的な変化が重なって起こる状態を「転倒後症候群(post-fall syndrome)」と呼びます。
本記事では、転倒後症候群の特徴と、そこから抜け出すためのリハビリの考え方を解説します。
1. 転倒後症候群とは?
転倒後症候群は、転倒をきっかけに「動くのが怖い」「外に出たくない」と感じ、活動量が大きく減ってしまう状態を指します。
心の問題(恐怖心・自信喪失)と、身体の問題(筋力低下・バランス能力の低下)が同時に進行するのが特徴です。
典型的な流れとしては以下の通りです。
- 転倒してケガをする
- 「また転ぶのでは」という恐怖心が芽生える
- 外出を控え、家で座って過ごす時間が増える
- 筋力や体幹バランスが低下
- さらに転びやすくなる
 → そして、“動かない → 筋力が落ちる → 転ぶ → さらに動けなくなる”という悪循環に陥ります。
2. 「怖いから動かない」は危険
転倒への恐怖は自然な反応ですが、「怖いから動かない」という選択が、実は転倒リスクを高めることもあります。
特に高齢期では、数週間動かないだけでも下肢筋力は大きく低下します。
さらに、バランス感覚をつかさどる前庭機能や感覚統合力も衰えてしまい、いざ動こうと思っても体がついていかなくなります。
そのため、“安全に動くこと”を取り戻すリハビリが非常に重要です。
恐怖を完全に消すのではなく、「怖さを感じながらも、少しずつ動ける自信を取り戻す」ことを目指します。
3. リハビリでのアプローチ
転倒後症候群に対しては、身体面と心理面の両方にアプローチすることが大切です。
① 身体面のアプローチ
- 下肢・体幹の筋力トレーニング
- バランス練習(立位保持・方向転換など)
- 歩行練習(段階的に距離や環境を変化)
- 転倒しにくい動作習慣の指導(椅子の立ち上がり、方向転換など)
② 心理面のアプローチ
- 「できた」という小さな成功体験を積み重ねる
- セラピストのサポートのもとで安心して動く
- 恐怖を口に出し、共有することで気持ちを整理する
自費リハビリのようにマンツーマンで時間をかけたサポートがあると、
こうした身体・心理の両側面を丁寧にケアできるのが大きな強みです。
僕自身、「転ぶのが怖い!」とおっしゃる方のリハビリを何名も担当してきました。
ほとんどの方は、リハビリ開始初期には身体機能面の課題が目立ち、筋力をつけたりバランス能力を上げることが必要なのですが、
「もう1人でも歩けそうだな」という段階になっても、怖さが強くて、文字通り「1歩踏み出せない」という方は多くいらっしゃいます。
そういった恐怖心を感じることは、そんなにおかしいことでもないかなと考えています。
健康で元気な人でも転ぶ時はありますし、いくら対策を重ねても「100%安全」と言いきることはできないので、「大丈夫」と言われても完全に安心することは難しいです。
それなので、怖さがあることは受け入れつつ、その状態でも少しずつ動けるようにしていくという考え方・進め方を大切にしています。
4. 自費リハビリでの実践例
当施設では、転倒後に「外に出るのが怖い」「歩くと不安定で…」という方も多く利用されます。
初めは室内で安全に立つ・歩く練習から始め、徐々に屋外歩行へと段階を踏んでいきます。
また、転倒しにくい靴の選び方や、手すり・杖の使い方など、生活環境面の工夫も合わせて指導します。
ご自宅へ訪問するリハビリも行っているので、自宅周囲の環境を見ながら、実際の動き方のアドバイス・練習なども実施する場合もあります。
「怖くて動けない」という状態から、「少し歩けた」「外出してみよう」に変わると、表情も明るくなります。
リハビリを通して再び“動ける自分”を取り戻すことは、生活の質(QOL)を大きく高める第一歩です。
まとめ
転倒後の恐怖は誰にでも起こり得る自然な反応です。
しかし、その恐怖にとらわれて動かなくなると、身体は確実に弱ってしまいます。
大切なのは、「怖さと上手に付き合いながら、安全に動ける身体と心を取り戻すこと」。
とは言っても「怖いものは怖い!」ですよね。
だからこそ、全てを自分ひとりで解決しようとせず、専門家に相談してサポートを受けるという選択肢も頭に入れておいてください。
少しずつで良いので「動ける自信」を積み重ねていきましょう。
当施設でも、身体機能面はもちろん、怖さなどの心理面にも気を配りながら、
実際の生活の改善に繋がるようにリハビリを実施しています。
お試しでのリハビリ体験も可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせ・お越しください!
 
        